『保管場所』は、ロジスティック領域で使用する組織です。当記事では、『保管場所』の組織構造や役割、組織定義時の検討ポイントなどをご説明します。
『保管場所』とは
『保管場所』とは、プラント内で在庫を管理する場所を表し、在庫数量を管理する組織です。組織構造としては、会社コードに紐づくプラントに割り当てられる組織です。1つのプラントに複数の保管場所を紐づけることが可能です。
『保管場所』の役割
『保管場所』の役割は、在庫数量の管理です。実地棚卸は保管場所ごとに行われ、品目の数量が管理されます。
プラント内で在庫を保管する場所を区別し数量管理することが目的であるため、保管場所単位での在庫の評価額を管理することはできません。つまり、保管場所間で在庫を移動した場合も会計仕訳は立たず、会計伝票が生成されることもありません。
また、『保管場所』は物理的な場所のみではなく、在庫状況を区別するために利用することもあります。以下の組織構造を例にご説明します。
〇〇株式会社は、千葉に「工場」を構えるメーカーで、横浜と神戸に「倉庫」があります。この3つの物理的拠点を『プラント』としています。千葉工場では、調達した原材料を保管する場所と製造が完了した完成品(商品)を保管する場所が存在し、これらを保管場所として定義しています。
しかし、プラント「千葉工場」には「輸入未着品」という保管場所も紐づいています。これは、どのように使用されるのでしょうか。
海外仕入先から調達を行った際、契約条件によっては実際にモノが自社に到着する前に在庫計上をしなければならないケースがあります。例えば、海外仕入先から原材料を購入したとします。契約条件に基づき、輸入元での船積み時に在庫計上を行わなければなりません。しかし、実際に原材料が工場に到着するまでには時間がかかります。このような場合に「輸入未着品」という保管場所を用意しておくことで、船積み時に一旦「輸入未着品」用の保管場所に在庫計上し、実際にモノが自社に届いたタイミングで保管場所 「原料倉庫」に変更するという運用をすることができます。つまり、この「輸入未着品」は、在庫の状況を区別して管理するための保管場所になります。
一方、「横浜倉庫」と「神戸倉庫」は、製造した製品を保管し出荷をしている拠点であると仮定します。この2つの倉庫には、「通常」「不良品」「輸出準備品」という3つの保管場所が紐づいていますが、これらはどれも物理的な保管場所ではなく、在庫を区別するための保管場所になります。出荷可能な製品は「通常」、何か問題があり出荷できない製品は「不良」、得意先への出荷のために確保している製品は「輸出準備品」として区別しています。
このように保管場所は、物理的な在庫保管場所だけではなく、在庫を区別する目的で使用することが多くあります。
検討ポイント
『保管場所』は、以下のポイントを考慮して定義するのが一般的です。
- プラント内で在庫保管場所を物理的に区別する必要があるか
- プラントよりも細かい粒度で数量管理をする必要があるか
- 在庫状況を区別して管理する必要があるか
在庫の保管場所を変更する際は、SAP上で在庫移動の処理が必要となります。そのため、『保管場所』の粒度を細かくしすぎると、保管場所を変更する度に在庫移動処が必要となるため業務負荷が高くなってしまうという点に注意してください。
最後に
『保管場所』は、プラントに紐づく在庫数量を管理する組織ですが、在庫状況を区別するために様々な使い方をすることができます。組織定義を行う際に参考にしていただければ幸いです。