SAPを運用する上で、組織定義はとても重要です。要件をしっかりと理解して組織定義を行わなければ、SAPで業務はできません。今回は、SAP全体の組織構造を簡潔に解説します。
目次
会計組織構造
管理領域
管理会計(CO)は、経営層が意思決定をするための内部向けの情報を管理するモジュールです。『管理領域』とは、この管理会計に使用する最上位層の組織で、原価と収益を管理する単位です。
『管理領域』には、複数の会社コードを紐づけることが可能です。『管理領域』に紐づいた会社コードは、管理会計データを一元管理することができます。そのため、子会社が存在する場合は、親会社と同一の管理領域に紐づけます。
会社コード
『管理領域』が管理会計で使用する組織であるのに対し、『会社コード』は主に財務会計で使用する組織です。
『会社コード』は法人を指し、外貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)などの財務諸表を作成する単位になります。つまり、子会社が存在する場合は、子会社の会社コードを用意する必要があります。
利益センタ
貸借対照表(B/S)を含めた利益管理を行う単位です。部署や課など、利益を計上する最小単位で定義します。
利益センタグループ
『利益センタ』をグルーピングした単位です。
原価センタ
費用を計上する最小単位です。
上図では、利益センタと同一の粒度で記載していますが、利益管理の粒度のよりも原価を管理する粒度の方が細かくなるケースが多いです。その理由は、売り上げは1つの利益センタに計上できても、原価は人件費、材料費など計上先が分かれたりするためです。そのため、一般的には『利益センタ』よりも『原価センタ』の方が粒度が細かくなります。
原価センタグループ
『原価センタ』をグルーピングした単位です。
在庫管理・購買領域の組織構造
プラント
『プラント』は、モジュール横断で使用するロジスティックスの根幹となる重要な組織です。
一般的に物理的な拠点を表す組織で、入出庫やMRP(所要量計算)を行う単位になります。そのため、工場、倉庫などの在庫管理を行う拠点単位で作成します。しかし、プラントは在庫数量だけではなく、在庫評価額を管理する組織単位でもあるため、部門ごとに原価の管理を行っている場合は、同じ拠点であってもプラントを分ける必要があります。
保管場所
プラント内で在庫を管理する物理的な場所を表す組織です。『保管場所』はあくまでも在庫管理を目的にした組織であるため、在庫評価額を管理することができません。
購買組織
『購買組織』は、調達を行う組織の単位です。会社コードとプラントに割り当てて使用します。『購買組織』は、購買情報マスタや仕入先マスタなどでキー項目として使用されるため、粒度を細かくしすぎるとマスタメンテナンスの負荷が高くなります。
購買グループ
『購買グループ』は、商品や部品の調達を行う購買担当者、もしくは、購買担当者のグループを表す組織です。
階層構造は持っておらず、独立した組織になります。購買担当者ひとりずつに購買グループを作成することもあれば、複数の担当者で1つの購買グループを使用するケースもあります。
販売領域の組織
販売エリア
『販売組織』『流通チャネル』『製品部門』の組み合わせを『販売エリア』と呼びます。
受注伝票などの販売トランザクションは、この『販売エリア』の入力が必須となります。また、『販売エリア』を構成する3つの組織は、販売に関するマスタのキー項目にもなるため、粒度を細かくしすぎるとマスタメンテナンスの負荷が大きくなる点に留意しなければなりません。
販売組織
販売活動において責任を持つ組織単位です。『会社コード』に割り当てる組織で、1つの会社に複数定義することができます。
『販売エリア』を構成する組織の1つであるため、受注伝票などのトランザクションで入力が必須となります。また、販売に関するマスタのキー項目になります。
流通チャネル
販売活動における商品やサービスの流通経路や流通方法を表す組織です。「直営」や「代理店」「ネット販売」などを区別するために使用します。
『販売エリア』を構成する組織の1つであるため、受注伝票などのトランザクションで入力が必須となります。また、販売に関するマスタのキー項目になります。
製品部門
販売する商品やサービスなどのグループを表す組織です。
『販売エリア』を構成する組織の1つであるため、受注伝票などのトランザクションで入力が必須となります。また、販売に関するマスタのキー項目になります。
営業所
支店などの営業拠点を表す組織で、『販売エリア』に割り当てます。受注伝票などのトランザクションでは必須ではありませんが、入力することでレポート作成や分析などの目的で使用することができます。
営業所グループ
支店などの各営業所に所属する営業マンや複数の営業マンのグループを表します。
『営業所グループ』は、『営業所』に紐づきます。営業マンひとりずつに営業所グループを作成することもあれば、複数の担当者で1つのグループを使用するケースもあります。
出荷ポイント
プラント内のどこから出荷するのかを表す組織です。出荷処理をする際に必ず指定しなければならないため、1つの『プラント』に最低1つの『出荷ポイント』を定義しなければなりません。
最後に
ここまでSAPで使用する組織の概要を説明してきました。実際は組織定義はSAPを使用して業務を行う上で重要です。実際には、各モジュールでそれぞれの組織定義を行いますが、自分の担当するモジュール以外の組織構造も理解し、チーム横断で検討できると良いでしょう。